臨床心理学

最終講義は花束が次々と (大妻女子大学人間関係学部・大学院臨床心理学専攻)深津千賀子教授

2011年03月28日

大妻女子大学人間関係学部人間関係学科社会・臨床心理学専攻および大学院人間文化研究科臨床心理学専攻教授で、心理相談センター所長でもある深津千賀子先生が最終講義を終えると、次々に花束が手渡され=写真、それは千秋楽を終えた舞台女優のカーテンコールのようにも見えました――。3月末で専任教員から退かれる深津先生の最終講義「私の心理臨床―個体論から関係論へ」は、3月5日、多摩キャンパスで行われました。集まったのは、卒業生、在学生、教員、知人ら約90人で、その中には、先生の前任校における教え子の姿も。

まず社会・臨床心理学専攻主任、西河正行教授から略歴・業績紹介があり、西河教授が深津先生を「学生は“おばさん”と呼んでいる」、しかし実は「スーパーおばさんと呼ぶべきすごい人」と称えると、先生は「おばあさんと呼ばれなくてよかったわ」とにこやかに引き取る場面も。最終講義で先生は、S・フロイトの著書『「グラディーヴァ」における妄想と夢』で精神分析学に開眼し、イギリスの精神分析家D・W・ウィニコットとの出会いで対象関係論へ導かれ、アメリカの乳幼児精神医学者R・エムディとの出会いで彼らが開発した母親と赤ちゃんの母子相互作用をみる「IFEEL Pictures」(乳幼児表情写真)日本版を作成し研究を続けていると、そのときどきの出会いによる自らの学問の深化を振り返りました。

そして、「心の科学における<客観性>とは何か。人間は自分の主観をとおして外界を認知し、そこには生まれて以来のその人の見方の特性がある。多くの人に共通する認知のしかた―客観性と呼ばれるもの―もあるが、その人の過去の体験から偏ったり、歪(ゆが)んで認識してしまうことも多い。つまり、心の科学では自然科学とは異なり、<主観を介した客観>しか扱えない難しさがある。そして、このような認知・認識の偏りや歪みを生じてしまったクライエントの主観的な世界にセラピストも自分の主観を通してかかわりながら、それをどう修復するかということが心理相談の仕事だと思う」と結びました。

先生は、長らく慶應義塾大学医学部精神神経科の医局に所属して著名な精神分析家・故小此木啓吾先生らのもとで精神分析への理解を深め、また北山研究所・千駄ヶ谷心理センターで精神分析的心理療法を実践されるなど、心の臨床家一筋に歩まれました。その後、平成12年に中京大学心理学部と文学部研究科の教授として赴任、平成18年に本学教授に迎えられ、社会・臨床心理学専攻では学部教育を、大学院人間文化研究科臨床心理学専攻では大学院教育を担当され、平成19年から心理相談センター所長を務めてきました。本学での在任5年間とは思えないほど、精力的にかつ誠実に大妻女子大学のためにご貢献・ご尽力いただき、学部生・大学院生ともに大きな影響を受けました。そのことは、最終講義の全員集合写真の人数の多さが証明しています。

最後に記念撮影で全員集合