臨床心理学

親子連れで聴講 「子育て応援イベント」開かれる!(主催:社会・臨床心理学専攻等)

2011年03月22日

子育て応援イベント「多摩で子育てするあなたに」(主催:大妻女子大学人間関係学部人間関係学科社会・臨床心理学専攻、心理相談センターほか)が3月5日、多摩キャンパスで行われました。

平成11年に人間関係学部が誕生してから10年が経過し、さらに平成15年より大学付属の心理相談センターで、親子のこころの相談・遊戯療法が行われてきたことから、社会・臨床心理学専攻教員が地元に大学の知を還元し、地域に協力できないものかと模索した際に、「子育て」に着目し、平成21年から『「子育ち」コミュニティの再生に関する実践研究プロジェクト』を立ち上げて研究してきたことにちなんだイベントです。

イベントのうち午前11時から心理相談センターで行われた無料の「子育て・こころの健康相談」では、親と子それぞれ4人の計8人の相談を受け付けました。ケースによっては、今後の本格的なこころの相談・遊戯療法につながるきっかけとなりました。

午後1時30分からは、同イベント「公開講演会」が約40人の聴講者を集めて行われました。託児サービスを行ったので、子どもを預けて聴き入る親がいる一方で、親子で並んで、あるいは赤ちゃんを抱いた聴講者もいました=上写真

前半司会者、福島哲夫教授と心理相談センター所長の深津千賀子教授の開会あいさつの後、社会・臨床心理学専攻教員と心理相談センター臨床心理士の計5人が次々にバトンタッチしながら日ごろの研究・臨床(カウンセリング)活動をとおして行っている子育て支援について講演しました。講演者と演題は次のとおり。

①田中優准教授「家庭・学校・地域の『子育ち』コミュニティ」②加藤美智子教授「子育てにおける親子の心の交流とボタンのかけ違い」③向井敦子教授「個性豊かなこどもたち」④中田香織・心理相談センター臨床心理士「心理相談センターからのメッセージ」⑤西河正行教授「『子育ち』コミュニティの再生に向けて」

①の講演で、田中准教授は、親中心の子育てではなく、子ども中心の「子育ち」へ転換した家庭・学校・地域連携コミュニティづくりを訴え、その一例として大学と幼稚園連携の可能性について、②加藤教授は、レオ・レオニ著の絵本『あおくんときいろちゃん』を題材に、こころの交流という目に見えない現象のイメージを提示し、完璧な親ではなく、ほどよい親であることをめざせればいいとのメッセージを、③向井教授は、子どもの発達は一様ではなく個人差があるので、標準を押し付けず、レディネス(心身機能が、行動や知識を習得できる段階まで発達し、学ぶ準備が整う状態)を待つことが大切であること、④中田臨床心理士は、心理相談センターへ寄せられる相談ケースの約半数は子育て問題。子どもは夫婦や親子の関係性を映す鏡で、悩んだら相談する人や場所を持つことが大切なので、子育てに行き詰まったらぜひセンターで相談して欲しいこと、⑤西河教授は、「子育ち」コミュニティの再生に関する実践研究プロジェクトを紹介して、子育て支援を受ける親の受身な姿勢に言及し、親―地域-大学三者の協力の重要性、将来的にはインターネットを利用した子育て情報の提供の可能性について、それぞれ話しました。

最後に、後半司会者の泊真児准教授が、「今回の講演では『ほどよい親』がキーワードとなった。私の出身の沖縄ことばにも『てーげーでいい』(完璧じゃなく、ほどほどでよい)という言葉がある。また『子育ち』コミュニティ再生という言葉は、沖縄の『ゆいまーる』(相互扶助・ネットワーキング)に通じるものがあると思った。親と子の絆を深めることが世代を結んでいくことになるので、地域で連携して『子育ち』を実践していくことが大切だ」と結びました。

イベントポスター
講演する田中准教授
西河教授

子育て応援イベント開催 3月5日摩キャンパス