臨床心理学

カンファレンスについて

2020年08月24日

カンファレンスとは

 今回は、臨床教育の中核をなすカンファレンス(全体事例検討会)について説明します。

 臨床教育は知的学習と体験学習からなります。体験学習は、心理相談センターでの学内実習、および病院、教育支援センター等での学外実習を通して行われます。特に、学内実習は教員の指導を受けながら、大学院生自らが直接クライエントとカウンセリングを行うので、最も大事な授業になります。

心理相談センターの面接室 思春期から成人のカウンセリングを行う箱庭付きの部屋です

 カンファレンスでは、大学院生は学内実習で体験したことを発表し、先生方と学生の皆でケースについて検討するとともに、講義科目では決して得られない実践的な学習が行われます。

 「実習のプロセス図」に示すように、修士1年前期からカンファレンスが始まり、2年間を通して、毎週、2コマ、通年で実施されます。実習生は毎週、臨床教員による個人指導(個人スーパービジョン)を受けますが、そのほかに、年に2回程度、カンファレンスにケースを出して皆に検討してもらいます。いわゆるグループ・スーパービジョンです。ケースを持ったことのない人も持っている人もカンファレンスを通してさまざまなことを学びます。

注)授業科目としては、臨床心理実習Ⅰ、Ⅱ(心理実践演習Ⅰ、Ⅱ)、臨床心理特別実習Ⅰ、Ⅱ(心理実践演習Ⅲ、Ⅳ)に当たります。

カンファレンスの実際

 以下の記事は、まだケースを持ったことのない修士1年生が初めてカンファレンスに参加した時の感想です。実習は早ければ修士1年後期の10、11月ころから開始されるので、先輩のケースの検討とはいえ、先輩の体験は「明日のわが身」でもあるので非常に臨場感のある学びの機会となります。

 ただし、今年は新型コロナウイルスの影響があり、院生が担当したケースのカンファレンスはなかなか実施できませんでした。しかし、感染防止対策を十全に行った上で、漸く7月に今年度初めてとなる対面によるカンファレンスが行われました。

<初めての対面によるカンファレンスに参加した感想> 修士1年 Aさん

 今年度の授業は基本的にオンラインで行われているが、他の院生や一部の先生方との初顔合わせの機会ともなるカンファレンスが開催された。それぞれがマスクと支給されたフェイスシールドを装着し、窓を開けて換気を促し、万全の感染予防対策を講じての開催だった。

 クライエントさんの個人情報の流出を防ぐための対面でのカンファレンスだったが、ケースを担当したばかり(コロナで中断中。近日中に再開予定)の修士2年生たちの発表は、真摯に手探りでケースに取り組む様子をひしひしと伝えるものだった。みんながわがこととしてケースを聞き、意見を言い合う有様を体験し、自分がケースを持ったときにもカンファレンスで事例を発表するのは心強い機会になるだろうと想像した。

 言葉にはせずとも体感できる先生方やほかの院生たちの反応は貴重なので、今後の状況は読めないが、対面でのカンファレンスの開催ができることを願っている。

<初めての対面カンファレンス> 修士2年 Bさん

 対面カンファレンスへの初参加と同時に、オンライン授業により先生方、先輩方、同期に直接お会いすることも初めて、又は久しぶりだったため大変緊張しておりました。

<学んだこと>今回は、お二人の先輩が学内実習にて実際に担当されているケースを検討しました。先輩方がケースを詳しく説明してくださり、クライエントの雰囲気やセッション時の様子、周囲との関係性を理解することができました。また、まだケースを担当していない1年生の些細な質問についても、先輩方が丁寧に回答してくださり、自分自身の視点からもケースを理解することができました。

<おわりに>対面カンファレンスに初めて参加したことで、後期からは自分がケース担当、発表の立場になることを改めて実感しました。私も他の参加者の方々から質問をされた際は自分なりの回答ができるよう、真摯にクライエントと関わっていきたいと思います。


心理相談センターのプレイルーム 砂場がある広い部屋で子どもの遊戯療法を行います